ここではSBI証券で株主優待のクロス取引(つなぎ売り)を行う方法を画像付きで詳しく解説していきたいと思います。
クロス取引(つなぎ売り)を行うことで現物買いと信用売りの手数料と貸株料のみで株主優待が手に入ります。
SBI証券では2023年9月30日発注分から国内株式売買手数料が0円になりました。※条件を満たす必要あり。
クロス取引のメリットは同銘柄・同株売数を両建する事で株価の変動リスクをゼロにする事です。
通常では権利落ち日は株価が下落するのですが、売り買いポジションを同時に持つことで株価下落のコストを無くせます。
※記事内の価格はすべて税込価格です。
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クロス取引のタイミングやルール
企業の株式を購入すれば誰でも貰える株主優待ですが、一体どの様にすれば特典をゲット出来るのでしょうか?
- 権利付き最終日までに株主になる
- 株主優待に必要な株数を購入する
権利付き最終日までに株主になる
株主優待を貰いたい企業の権利付き最終日までに株を購入しておきます。
「権利付き最終日」とは株主が銘柄を保有している事で株主優待や配当金を受け取る権利を得られる最終取引日です。
株主優待の権利を得るためには権利付き最終日の大引け(後場の最後の取引)までに銘柄を購入する必要があります。
通常では権利確定日の2営業日前が権利付き最終日になり、翌日の権利落ち日に売却しても株主優待は貰えます。
権利付き最終日 | 権利落ち日 |
---|---|
1月29日(月) | 1月30日(火) |
2月27日(火) | 2月28日(水) |
3月27日(水) | 3月28日(木) |
4月25日(木) | 4月26日(金) |
5月29日(水) | 5月30日(木) |
6月26日(水) | 6月27日(木) |
7月29日(月) | 7月30日(火) |
8月28日(水) | 8月29日(木) |
9月26日(木) | 9月27日(金) |
10月29日(火) | 10月30日(水) |
11月27日(水) | 11月28日(木) |
12月26日(木) | 12月27日(金) |
株主優待に必要な株数を購入する
株主優待に必要な株数を所持している事も株主優待をゲットする上で必要な条件です。
一般的には最小の売買単位である1単元(100株)から株主優待の権利を得られますが、中には単元未満株(1~99株)や1,000株以上という条件もあります。
例えば今回、株主優待でクロス取引を行う大和証券グループ本社[8601]の株主優待に必要な株数は1,000株以上です。残念ながら100株では株主優待は貰えません。
また保有している株数に応じて貰える内容が豪華になる場合もあるのでチェックをしておくと良いですね。
株主優待のクロス取引にかかる手数料
株主優待のクロス取引にかかる手数料ですが、基本的に4つの手数料がかかります。
売買手数料 | 現物買い・信用売り時にかかる手数料 無料になりました。 |
---|---|
信用取引の貸株料 | 株を借りている日数分の貸株料 |
逆日歩 | 制度信用取引の信用売りでは、株を借りている日数分の貸株料が発生する恐れがあります |
配当落調整金の支払い | 信用売りでは配当金を支払う必要があります |
売買手数料
追記:SBI証券では2023年9月30日発注分から国内株式(現物・信用・S株)の売買手数料が0円になりました。
SBI証券のインターネットコースでは「スタンダードプラン」「アクティブプラン」という二つの手数料プランを提供しています。
今回の「ゼロ革命」開始によりどちらのプランの顧客も条件を満たす事により約定代金に関わらず売買手数料が0円となりました。
売買手数料0円の条件は以下の①~③の取引報告書や各種交付書面を全て郵送から電子交付に切り替えるだけです。
①円貨建・米株信用の各種報告書 ②外貨建(米株信用を除く)の各種報告書 ③特定口座年間取引報告書 |
株主優待のクロス取引を行うには株を購入・売却するのですが、どちらにも手数料がかかってきます。SBI証券ではスタンダードプランの売買手数料は下記の通りです。
スタンダードプラン
1回の取引ごとに手数料がかかるプラン。
現物取引
1注文の約定代金 | 手数料 |
---|---|
~5万円 | 55円 |
~10万円 | 99円 |
~20万円 | 115円 |
~50万円 | 275円 |
~100万円 | 535円 |
~150万円 | 640円 |
~3,000万円 | 1,013円 |
3,000万円超 | 1,070円 |
信用取引
1注文の約定代金 | 通常 | 大口優遇※ |
---|---|---|
~10万円 | 99円 | 0円 |
~20万円 | 148円 | |
~50万円 | 198円 | |
50万円超 | 385円 |
※大口優遇の条件はコチラで確認して下さい。
アクティブプラン
1日の注文代金の合計金額に対して手数料がかかるプラン。
現物取引
1日の約定代金 | 手数料 |
---|---|
100万円まで | 0円 |
200万円まで | 1,238円 |
300万円まで | 1,691円 |
以降100万円増加ごとに | プラス295円 |
信用取引
1日の約定代金 | 通常 | 大口優遇※ |
---|---|---|
100万円まで | 0円 | 0円 |
200万円まで | 880円 | |
以降100万円 増加ごとに |
440円ずつ増加 |
※大口優遇の条件はコチラで確認して下さい。
信用取引の貸株料・逆日歩
信用取引とは株式を取引する上で株式の購入資金を証券会社から借り入れて株の売買を行う事です。
この信用取引では手持ちの資金の3倍までの取引を行うことができるので当然利益も3倍になります。
信用取引の大きな特徴は空売りが出来る事です、空売りとは証券会社から株を借りて売却して株価が下がったところで株を買い直し証券会社に返済します。この売値と買値の差額が利益になります。
当然株を借りる為には借り賃を支払う必要があり、この借り賃には『金利』『貸株料』『品貸料』があります。
今回の場合は信用売りを行うので『貸株料』『品貸料(逆日歩)』を支払う必要があります。
一般信用取引と制度信用取引の違い
信用取引では一般信用取引と制度信用取引という2種類の取引方法があります。
一般信用取引 | 制度信用取引 | |
---|---|---|
誰が取引銘柄を選ぶか | 銘柄や取引期限等を証券会社が決めて行う取引。サービス提供の有無や内容は各証券会社で異なる。 | 銘柄や取引期限等を証券取引所が決めて行う取引。 |
取引できる銘柄 | 原則では全上場銘柄が取引の対象 | 取引所が指定する制度信用銘柄が取引の対象 |
返済期限 | 無期限(証券会社ごとに違う) | 6カ月以内 |
貸株料 | 割高 | 割安 |
逆日歩 | 発生しない | 発生することもある |
一般信用取引と制度信用取引の最大の違いは『逆日歩』の有無です。『逆日歩』とは株を借りる上でのレンタル料金みたいなものです。
信用取引で売建が多くなると証券金融会社で株式が不足します。この時に他所から株式を調達するのですが、この時の借り賃が『逆日歩』です。
『逆日歩』は機関投資家などから調達するのですが、非常に高額になることもあります。『逆日歩』で株主優待で貰える金額以上を支払った等をよく耳にしますね。
ところが一般信用取引で売建が可能な証券会社は意外に少なく以下の10社になっています。
- 楽天証券
- auカブコム証券
- 岩井コスモ証券
- SBI証券
- SMBC日興証券
- GMOクリック証券
- 松井証券
- 大和証券
- マネックス証券
- 野村証券
ちなみに、SBI証券の一般信用売りの貸株料は、無期限 1.10%、短期 3.9%です。
配当落調整金の支払い
権利付き最終日をまたぐと株主優待をゲット出来る事は分かりましたが、実は配当金も貰うことが出来ます。
現物株式を購入しているので配当金はゲットできるのですが、クロス取引を行っていた場合は同時に一般信用売を行っているので反対に配当金を支払わなければなりません。この支払うお金を配当落調整金といいます。
株式を売却したり配当金を貰った場合は利益に対して税金(20.315%)がかかります。
ところがクロス売りを行った場合は配当金が税引き後79.685%貰えるのに対して、配当金の支払いは100%になります。
- 制度信用取引 配当金 × 84.865%
- 一般信用取引 配当金 × 100%
配当金が10,000円の場合は10,000円 × 20.315%=2,031円の税金が引かれるので貰える配当金は7,969円です、これに対して一般信用売りを行った場合は配当落調整金を10,000円支払います。
クロス売りを行った場合はこの差額2,031円を支払わなければなりません。
株式の場合は1年間のトータルで損益を計算していくので利益が出ていれば税金を払わなければなりませんが、損失が出ている場合は税金を払う必要はありません。
あなたが証券会社の口座でクロス売りしか行わない場合は利益は一切出ないので、払いすぎた税金は翌年の1月に全額還付されます。
- 特定口座(源泉徴収あり)を選択
- 配当金受け取り方法で『株式数比例配分方式』を選択
SBI証券で以下のように記載されています。
権利付き最終売買日と権利落ち日をまたいで信用建玉がある場合、株主総会の1~2週間後に配当分をお客様の口座へ入金または差引いたします。
SBI証券でクロス取引を行う手順
これから実際にクロス取引を行っていきますが、無くてはならないのは証券会社の取引口座ですね。
今回はSBI証券で取引を行っていきます、SBI証券はIPOの申し込み用で開設したのですがネット証券だけに取引手数料が安いです。
SBI証券では2023年9月30日発注分から国内株式売買手数料が0円になりました。※条件を満たす必要あり。
SBI証券の口座開設が完了したらすぐに信用取引口座を開いておきましょう、クロス取引では信用売りを行うので信用取引口座が必要になってきます。
SBI証券で信用取引口座が開けたら準備完了です、それでは以下の手順でクロス取引を行います。
- 権利付き最終日の前日、株式市場終了後にSBI証券にログイン
- 信用売りと現物買いを行う
- 翌日の権利落ち日以降に現渡(げんわたし)注文を行う
株式市場終了後にSBI証券にログインして取引したい銘柄を選ぶ
最初にSBI証券にログインして売買をする銘柄を選びます、買いたい銘柄が決まっていない場合はトップページから『銘柄をさがす』欄の『株主優待』へ進みましょう。
『株主優待検索』ページが開きました、ここでクロス取引の銘柄を検索していきます。
注意点として『つなぎ売り』欄では『一般売り』を選択しましょう。
- 優待内容
- 優待権利確定月
- つなぎ売り(一般売り)
- 優待獲得に必要な金額
- こだわり条件
信用売りと現物買いを行う(権利付最終日前日)
今回、クロス取引を行うのは 大和証券グループ本社[8601] です。
優待を取得するための最低株数は1,000株で3月・9月の年2回優待が貰えます、以下の中から選択するのですが取得する株数によって違ってきます。
- 名産品、雑貨
- 『ダイワのポイントプログラム』の交換ポイント
- 会社四季報
ちなみに2019年3月期の中間配当は12円となっています。※2020-21年は11円、2022年は17円。
SBI証券で信用売りを行う
最初に権利付最終日を確認しておきましょう、2019年3月26日が権利付最終日になります。
現在の時刻は3月25日の午後7時を回ったところです。
それでは信用売り注文を入れていきましょう。
一番最初に売建受注枠の在庫があるかどうかを確認しておきます、在庫がなければ空売りは出来ません。
- 株数 売却したい株数を入力します。
- 価格 ここでは『成行』を選択しましょう。
- 期間 『当日中』を選択します。
- 信用取引区分 『一般(15日)』を選択します。
全ての項目の入力が終わったら取引パスワードを入力して『注文確認画面へ』をクリックします。
注文した内容が表示されるので間違いがないか確認しましょう、上から「取引」は『信用新規売(一般信用/15日)』で「株数」は『1,000株』、「執行条件」は『成行』、「期間」は『当日注文』。
間違いがなければ『注文発注』をクリックします。
以上で売り注文の完了です。
SBI証券で現物買いを行う
今度は現物買いを行っていきますが『信用売り』と同一条件で現物買い注文を出していきます。
- 株数 購入したい株数を入力します。
- 価格 ここでは『成行』を選択しましょう。
- 期間 『当日中』を選択します。
- 預かり区分 『特定預かり』を選択します。
全ての項目の入力が終わったら取引パスワードを入力して『注文確認画面へ』をクリックします。
注文した内容が表示されるので間違いがないか確認しましょう、上から「取引」は『現物買』で「期間」は『当日注文』、「株数」は『1,000株』、「執行条件」は『成行』、「預り区分」は『特定預り』。
間違えがなければ『注文発注』をクリックしましょう。
以上で買い注文の完了です。
『注文照会』で注文内容の確認
信用売りと現物買いが完了しましたが、間違い等の不備があったら大変なので最終確認を行いましょう。トップページから『取引』⇒『注文照会 取消・訂正』と進みます。
『信用売(15日)』と『現物買』が同注文になっていればOKです。
約定したかどうかの確認(権利付最終日)
権利付き最終日の前日(3月25日)の午後7時頃に信用売りと現物買いを行いました、注文日の翌日の株式市場が開いてから約定したかどうかの確認を行いましょう。
トップページから『取引』⇒『注文照会 取消・訂正』と進むと注文一覧が記載されています、『注文状況』で『注文中』⇒『完了(全部約定)』となっていればOKです。
本日が権利付き最終日なので、今日1日株式を所持することで株主権利が確定して株主優待が貰えます。
権利落ち日に株を『現渡』で売却
権利付き最終日が終わり翌日の権利落ち日になりました、日にちで言うと3月27日ですね。この日になれば所持していた株式を売却しても株主権利(配当金・株主優待など)を得ることが出来ます。
3/26(火) | 3/27(水) | 3/28(木) | 3/39(金) | 3/30(土) | 3/31(日) |
---|---|---|---|---|---|
権利付最終日 | 権利落ち日 | 権利確定日 |
のんびりしていると信用取引の貸株料を取られてしまうので、さっそく株式を売却していきましょう。
クロス売りをしている場合は手元に現物買いで手に入れた株式(ここでは1,000株)と信用売りで手に入れた株式(ここでは1,000株)と買い株と売り株を同株数所持しています。
この場合は買い・売り戻しによる差額決済をするのではなく同銘柄・同株数の株式を差し入れて決済します、これを現渡しといいます。
今回の場合では1,000株購入して1,000株売却しているのでお互いにプラスマイナスゼロにする事ですね、ちなみに現渡しにかかる手数料は無料です。
最初にSBI証券にログインしてトップページから①『取引』⇒②『信用返済・現引現渡』と進みます。
続いて『現渡』をクリックします。
決済する株売数を入力して『注文確認画面へ』をクリックしましょう。
間違いがないか確認して、問題がければ『注文発注』をクリックしましょう。
これで『現渡』での注文が完了しました。
現渡での注文の確認を行っておきましょう、トップページから『取引』⇒『注文照会 取消・訂正』と進むと注文一覧が記載されているので『注文状況』で『注文中』⇒『完了(全部約定)』となっていればOKです。
クロス取引にかかった手数料の計算
以上でSBI証券でのクロス取引が完了しました、後は株主優待品が届くのを待つだけになります。※優待が届くまでには2~3ヶ月程度が目安になります。
クロス取引にかかった手数料がいくらになったのか計算しておきましょう。
クロス取引(一般信用取引)のコスト計算
- 現物買い手数料⇒0円
- 信用売り手数料⇒0円
- 信用売り貸株料
今回クロス取引を行った銘柄は 大和証券グループ本社[8601] で、取引株数は1,000株です。
手数料 | 貸株料 | 小計 | |
---|---|---|---|
現物買い | 525円 | – | 525円 |
信用売り | 378円 | 233円 | 611円 |
合計手数料 | 1,136円 |
1,000株で2,000円相当の商品やポイントと交換なので、今回はかなり手数料がかかったと言えますね。
SBI証券では2023年9月30日発注分から国内株式売買手数料が0円になりました。※条件を満たす必要あり。
売買手数料の確認方法
トップページから『口座管理』⇒『取引履歴』⇒『約定履歴』と進み、約定日を選択して『紹介』をクリック。
貸株料の確認方法トップページから『口座管理』⇒『取引履歴』⇒『信用決済明細』と進み、約定日を選択して『紹介』をクリック。
貸株料の計算方法
今回の取引では233円の貸株料が発生しましたが、この金額は以下のように計算されます。
購入株数 × 購入時の株価×貸株料率 ÷ 365 × 借りた日数=貸株料
これを今回に当てはめます。
1,000株 × 546.1円 × 3.9% ÷ 365日 ×4 日=233円
株式を購入した日を約定日と呼びますが、株式が受け渡されるのは4営業日目です。
火曜日に空売りして翌日の水曜日に買い戻した場合は受け渡し日は金曜と翌週の月曜です、土日を挟むので4日分の貸株料が発生する事になります。
2019年7月16日の取引(約定)より株式の受け渡し期間が4日から3日に短縮されました。
まとめ
今回はSBI証券で株主優待をゲットするためにクロス取引(つなぎ売り)に挑戦してみました。
現物買いと信用売りを組み合わせるのですが実際に購入するのは簡単でした、売却する場合も現渡しを行えばあっという間に決済されてしまいます。
いちばん難儀したのは手数料等がいくらかかったかですね、これをしっかり把握しておかないと安心してクロス取引を行えません。
株主優待の内容と手数料を把握してお得になるような銘柄を見つけて取引を行い、損をしないように気を付けていきたいですね。
教えていただけるとありがたいのですが、
配当落調整金のところで
利益が出ていなければ税金を払わなくてよいとありますが
利益が1円でも出ていると税金2割くらい取られるのでしょうか?
みんこさんお問い合わせありがとうございます。
配当落調整金の事ですが、
現物買いの場合10,000円で配当金は7,969円
一般信用売りの場合10,000円で配当金の支払10,000円。
差額の2,031円を支払いますが、利益が出ていない場合は翌年の1月に全額還付されます。
利益が10,000円出た場合は10,000円ー2,031円=7,969円が売却益になるので、ここから税金を支払う事になります。
配当落調整金は売却損と同じ扱いになり、所得税の計算では売却益と相殺ができます。